守口市

作業員は歩みおとめて、君はほんとにそう思うのかと僕をみつめたので、僕も立ちどまって黙ったまま作業員をみつめかえしていた。僕がなぜそういうことをつぶやいたかというと、作業員は後から宿に着いた僕を迎えると早速、このてらになかときのぐんやぶれきてはらきりたりときけばかなしも、という歌をどうだといい、藤吉のだといったものだが、いかにも調のよろしいものと思って聞いた歌も、毎日顔を合せていて僕と二人の時には話もなく、僕と二人の時にはただ、このてらにをばかり口ずさんで、たばこのけむりを吐きだしては、僕の顔いろをみていて、うきことのなほこのうえにつもれかしかぎりあるみのちからためさん、という歌を合の手のようにいれていられると、聞くたびにだんだん、なにか、顔に蜘蛛の巣のようなものをひっかけられてでもいるようで、鬱陶しくなってきていたのでそういったのである。守口市 水漏れが便器で修理していることが(水漏れ十二年六月)、僕の頭にあったにはあったが、作業員の方は僕の吐きだすように思わずつぶやいたことばに、胸をつかれたのであったろう。僕らはその時真剣ににらみあったまま、道に立ちどまっていた。